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外部環境の悪化が「生き残れる会社」を創る
2020年3月22日の共同通信発表によると「政府、コロナ対策30兆円規模に:国の財政支出をリーマン・ショック後の対策の15兆円を上回る金額とし、民間支出も含めた事業規模を30兆円超にする方向で調整に入った。」との報道があった。2020年4月上旬にも決定する見通しとのことだ。
連日のコロナショック報道で経済の先行き不安や経営状況の悪化で悩んでいる人は多い。筆者のところにも多く経営相談が寄せられる。「売上が半減した」「この先が見えない」「資金が尽きるかもしれない」など、多数の経営悪化の報告があった。
しかし同時に「コロナ特需で売上が2倍になりました!」「全く売上は変わらずやっています」「他店からうちに流れてきました」など、今回のコロナショックがむしろ「追い風」になっている会社も存在する。
コロナショックが「不景気の始まり」ではない
日本は経済絶好調だった「高度成長期」を経て、その後「アベノミクス」で多少の好況があったものの、それ以外の経済好況期はあまり存在しない。
むしろ経済的な外部環境は悪化傾向にあった。サブプライムショック、リーマン・ショック、阪神淡路大震災、東日本大震災などこの10年、景気を持ち直してきた瞬間に必ずと言っていいほど外部環境の悪化があった。
その都度、倒産する会社が増えた半面、それらから生き残っている会社も多数存在している。私の持論としては「逆境が強靭な会社を創る」と考えており、実際、それら逆境でも生き残っている会社は常に「備え」がある。
危機に強い会社を創る
これら〇〇ショックなどの「危機に強い会社」の要件は以下と定義している。
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現預金がふんだんにある(流動資産>流動負債)
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サブスクリプションモデル事業である(継続的な売り上げ見通しがある)
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粗利率が高い(理想は粗利率70%以上)
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在庫がない事業(保管場所が必要ない、陳腐化しない)
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顧客リストの管理が行き届いている(会社がつぶれてもやり直せる)
そのほかにも危機に強い会社の要件は多数があるが、上記5点を意識している会社は間違いなく危機に強い。特に「現預金がふんだんにある」が重要で、赤字であっても現預金が豊富にあれば当面の間はつぶれることはない。実際の現預金比率の高め方としては「無保証人・無担保の借入」を推奨している。
公的機関である商工会、公庫などで申し込みできる借入の中でも無保証人・無担保のものは日ごろから借りておくとよい。手元の現金を厚くしておけば急激な売上減にも対応できる。具体的には運転資金は仕入れ代金の3か月分といわれているが、多くの事業をみているとそれでも足りないことが多い。月に使う費用総額の3か月~6か月分、現預金があればまずは合格といったところだろう。
元々、外部環境の悪化は始まっている
ところで、日本は今回のコロナショックに関わらず、すでに外部環境の悪化が始まっていることをご存じだろうか。それは「人口減少」である。2012年より始まった人口減少は国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2010年は1億2805万人をピークに2053年にはとうとう1億人を割り込む予定だ。
これは人口70万人程度の大都市が毎年1個ずつ消滅していくペースである。2020年1月の東京都世田谷区の人口が90万人前後なので毎年、世田谷区がなくなるイメージだ。つまり極端な例としては世田谷区民を相手にしている事業者としては1年で事業が立ちいかなくなる可能性が高い。
実際には人口が増える地域、減る地域が存在するが、平均して減少しているのは間違いない。人口が減れば働く人も商品を買う人も同時に減る。ビジネス活動が滞る。それは「いつか来る」のではなく「もう来ている」のである。
外部環境に立ち向かうには一人一人の「稼ぐ力」がカギ
経済産業省による平成30年5月発表の資料「世界の構造変化と日本の対応」によると「稼ぐ力」は世界平均の半分とのことを示している。
※画像引用:経済産業省による平成30年5月発表の資料「世界の構造変化と日本の対応」より
この中で産業構造、社会システムの変化に対応し、稼ぐ力を身に着けるための提言がされている。この一部を紹介する。
1.人生100年時代がやってくる
※画像引用:経済産業省による平成30年5月発表の資料「世界の構造変化と日本の対応」より
このモデルはリンダ・グラットン著の「LIFE SHIFT」から抜粋しているモデルを参考にしているが、個々人の状況やタイミングにおいて、3つのステージを行き来する時代がやってくるという。
特に25歳~60歳の働き方は終身雇用制度時代の日本とは違い、現代は「組織に雇われずに独立した立場で生産的な活動に携わる人が増える(フリーランス)」としている。
実際に上場企業も副業を認めている現状を鑑みた場合に「一生会社にすがっていける」時代は終わり「顧客から必要とされる人は会社から必要とされる人」でもあると思うし、企業側も「独立起業できる力を持った社員」がいればなお、生産性を上げることができるであろう。
2.第四次産業革命の下で求められる人材
第四次産業革命とはIoT、ビックデータ、シェアリングエコノミー、フィンテックなどといった高度なデータ活用と業務自動化が可能になる産業構造について指す。簡単に言うと「考える仕事」を人ではなくAIや機械がやってくれる世の中になってきた、ということである。
現在、AIを現場で使いこなすための人材が不足していると聞く。「稼ぐ力」「生産性アップ」とは「短い時間、労力で大きな顧客や社会への貢献をする」ことである。高度成長期のような「ロボットの代わりに人間を長時間労働させることで売上を上げる」とは真逆のアプローチである。
よって、すべてのビジネスパーソンは「労働を学ぶ」のではなく、従来の経営レイヤーが担っていた「問題の本質を理解する」「最短の時間で問題を解決する」「既知ではなく未知の問題を事前に解決するアイデア力」「人を動かす力」が最も必要になった時代ともいえる。
※画像引用:経済産業省による平成30年5月発表の資料「世界の構造変化と日本の対応」より
3.日本の「経営教育」(世界ランキング)53位
「日本の労働者は、読み書き等、基礎能力は高いが、経営管理・国際性等の高度な能力が不足。」と経産省は明確に表現している。それはもっともの指摘であると私も感じている。なぜなら、義務教育や一般的な大学教育では「経営教育」はされていないからだ。
これら教育機関で学べることは「経営学」であり、教壇に立っているのは「教師・講師」であり、「経営者」ではない。実際に経営を教えられるのは新規事業の立ち上げ経験者や経営者、元経営者であることがこれからの時代は必須と考える。
「学ぶ」の語源は「まねぶ」であり、「真似をする」ことから来ている。真似は現実、現場でしか学べない。経営教育は机上の空論で推し進めることは非常に困難と考える。
今こそ「経営力教育」の必要性
JPBAで提唱しているのは上記3点のこれから先の未来の課題に対応した「未来の経営教育」であると自負し、以下の取り組みを行っている。
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JPBAは「経営力を身に着けたいすべてのビジネスパーソン」に「現役経営者から直接、経営力教育が学べる」場所である。
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JPBAは経営学ではなく今日から、明日から現場で使える「経営実学」である。
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JPBAは「経営の教習所」と位置づけ、社員、管理職、経営者問わずすべてのビジネスパーソンに「経営力」が必要であると提唱し、個々人の経営レベルに合わせたカリキュラムを提供している
上記3点を行うことで私たちJPBAは日本の生産性を諸外国並みに達成することを直近の目標とし、いずれは「世界一生産性が高い国」として経営者、社員、顧客、社会が経済的にも時間的にも心にもゆとりがある社会を創りたい。そのためにはコロナショックであれ、〇〇ショックであれ「危機に負けない強い会社作り」「未来を描ける強いリーダーづくり」「稼げる社員・自分づくり」を全力で支援するのが私たちJPBA講師の使命であると想い、今日も活動している。
(完)
【代表理事イベント情報】 |
【参加者募集中】2020年4月3日(金)
負けない!辞めない!自ら動く!「プロフェッショナル社員人材育成講座」
詳細ページはこちらです
https://jpb.or.jp/seminar/urasoe20200403/