2018年9月から全国紙新聞「サンケイビジネスアイ」朝刊とフジサンケイグループWebメディア「Sankei Biz」に弊社代表の親川政明による執筆で経営コラム記事連載を掲載しました。当経営コラムは掲載コラムをノーカット版でお届けします。
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フジサンケイビジネスアイ
2018年10月30日掲載
【経営コラム連載第8回】
「最高の未来を定義し最短で結果を出す」
http://www.sankeibiz.jp/business/news/181030/bsg1810300500003-n1.htm
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【ノーカット原稿版】
今月10月1日より全国の最低賃金額が変更になった。厚生労働省が公開している「平成30年度地域別最低賃金時間額答申状況 」によると、時給アップの平均額は+26円となった。当然、残業や休日出勤は基本給の割り増しとなるので、実質の時給アップ額はそれ以上になることであろう。もらうほうは嬉しい時給アップだが、経営環境の事業者にとっては厳しい資金繰りの面で給与支払いに不安になることがあるであろう。これをどう乗り切ればよいのだろうか。
その答えはシンプルで「売上・粗利を上げて給与財源の上限を増やす」か「経費削減で削減分を人件費に充てるか」ということになる。だが、経営環境が厳しい場合は経費削減も限界がある。つまるところは「従業員一人当たりの売上・粗利」を上げるほか、この難局を乗り切る方法はない。
しかし、考えようによっては今回の賃上げは社員のモチベーションアップにつながる可能性もある。「最低賃金が上がったので仕方なく賃金を上げます」という伝え方をしてしまっては従業員のモチベーションを下げることにつながる。「これをきっかけにもっと稼げるように成果報酬型にします」あるいは「従業員一同、生産性アップに取り組むことで最低賃金以上にベースアップできる」と伝えると「もっと頑張ろう」と思う社員も出てくる。
当然、給与財源を確保するために業績アップは欠かせない。そのために生産性を上げる方法はいくつかある。筆者のコンサルティング先で初めに行うケースが多いのは「業務分担の明確化」である。つまり「誰が何の仕事を行うか」を最大限に明確にすることである。
組織が小さいうちは「なんとなく」で回っていた仕事も大所帯になるとどうしても社員Aさんと社員Bさんの業務に「漏れとダブり」が出てくる。定期的に業務の分担を見直し「漏れとダブり」を無くし役割分担の最適化を果たすことで同じ人件費でも経費が半分になることや売上が2倍になるケースも多々ある。
また、一人一人のワークフローの見直しも重要だ。ワークフローをひとつづつ丁寧に追ってみると無駄な業務をしている人が多いことに気づく。例えばパソコンが良くフリーズするのでこまめにバックアップを取っている、などである。それであればコストをかけてでもパソコンを買い替えたほうがバックアップにかかる時間も減り、業務ストレスも減る。
また外注に任せられる仕事を内製で何とか行おうとして、かえって人件費がかかっている場合もある。これからは作業時間を記録して社員の給与金額で割り算する。そこで算出された社員の時給以下の仕事は外注かパートに仕事を振ればよい。
時給以上の仕事なら時給効率が良いので内製化すればよい。つまり社員にはより高いレベルの仕事をしてもらい、特段専門性が低い仕事や頻度が低い仕事はパートか外注に振れば社員一名当たりの業績は飛躍的に向上する。
このように生産性を上げる手段は多くある。それと同時に、給与体系を変更することは会社から社員へのメッセージでもある。つまり、報酬体系は「支払う側」と「受け取る側」のコミュニケーションであることがある。社員にとって会社から給与をもらうことは死活問題である。同時に、経営者は社員に給与を払ってどれだけ「業績を残す仕事」をしてもらうかが死活問題となる。
経営者の仕事は「社員に無駄な仕事をさせる」ことではなく「社員に活躍の機会を与え」「顧客に貢献し利潤を上げる」ことであろう。今回の最低賃金の見直しはそれらを踏まえて報酬設計を検討されてみてはいかがだろうか。